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大阪高等裁判所 昭和27年(ネ)508号 判決

控訴人等の被控訴人大阪府知事に対する本件控訴並びに控訴人大西仙太郎の被控訴人大阪府北河内地方事務所長に対する本件控訴はいずれもこれを棄却する。

控訴人大西未子と被控訴人大阪府北河内地方事務所長間の原判決を左の通り変更する。

控訴人大西末子の同被控訴人が控訴人大西仙太郎に対してなした昭和二十四年度第二種事業税の賦課処分並びにその滞納処分としてなしたラジオ一台の差押の各取消及びその返還を求める訴はこれを却下する。

同被控訴人が控訴人大西仙太郎に対する昭和二十四年度第二種事業税の滞納処分としてなした小箪笥並びに三重塗箪笥各一棹の差押を取消す。

同被控訴人は控訴人大西末子に対し右小箪笥並びに三重塗箪笥各一棹を返還すべし。

控訴人大西末子のその余の請求を棄却する。

控訴人等と被控訴人大阪府知事との間の控訴費用は控訴人等の負担とし控訴人大西仙太郎と被控訴人大阪府北河内地方事務所長との間の控訴費用は控訴人大西仙太郎の負担とし控訴人大西末子と被控訴人大阪府北河内地方事務所長との間に生じた訴訟費用は第一、二審を通じこれを三分しその二を控訴人大西末子の負担その余を同被控訴人の負担とする。

二、事  実

控訴人等は原判決を取消す被控訴人等の控訴人大西仙太郎に対する昭和二十四年度第二種事業税の賦課処分を取消す被控訴人等が控訴人大西仙太郎に対する昭和二十四年度第二種事業税の滞納処分としてなしたラジオ並びにミシン各一台及び小箪笥並びに三重塗箪笥各一棹の差押を取消す。被控訴人等は控訴人等に対し右差押物件を返還すべし。訴訟費用は第一、二審共被控訴人等の負担とする、旨の判決を求め被控訴人等の各指定代理人はそれぞれ本件控訴を棄却する、控訴費用は控訴人等の負担とする旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、控訴人等において控訴人大西仙太郎の昭和二十三年度における蓮根の作付面積は二反七畝二十九歩で、その収穫は反当り三百六十貫であつたところ、同年度における蓮根の供出割当は反当り五百貫であつたので同控訴人は不足量を他から借受け供出を完遂したが、その供出価格は一貫につき三十円六十三銭であつた。しかるにその蓮根耕作の反当り必要経費は種代、包藁代、肥料代並びに人件費合計一万一千二十円であつたので同控訴人は右蓮根耕作による所得はなかつたものである。しかして本件差押物件中ミシン一台、小箪笥並びに三重塗箪笥各一棹は控訴人大西末子の所有物件である。よつて本件第二種事業税の賦課処分並びにそれに基く滞納処分は違法である。と附陳し、被控訴人等の各指定代理人において本件差押物件はいずれも控訴人大西仙太郎の所有物件であつて、その内ミシン一台、小箪笥並びに三重塗箪笥各一棹が控訴人大西末子の所有物件であることは否認すると述べ、尚被控訴人大阪府北河内地方事務所長指定代理人において昭和二十三年における控訴人大西仙太郎居住の大阪府北河内郡南郷村大字新田地区の蓮根作付による反当りの収穫量は五百貫を下らず、その生産者の同年中の蓮根の販売価格は年間を通じ一貫につき平均七十円(上半期三十六円乃至九十円、下半期五十円乃至百二十円)を下らなかつたものであるが、その必要経費は反当り肥料代、包装藁代等合計三千九百二十円であつたもので、控訴人大西仙太郎の同年度における蓮根の作付面積は二反七畝二十九歩で、その蓮根の総収穫は千四百貫を下らず、その所得は四万三千円を下ることはない。しかして控訴人大阪府北河内地方事務所長が本件差押物件を同地方事務所に運搬し現在同所において保管していることは認める、と附陳した外原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する(各立証省略)。

三、理  由

先づ被控訴人大阪府知事(以下知事と略称する)の本案前の抗弁につき判断するに、被控訴人大阪府北河内地方事務所長(以下地方事務所長と略称する)が控訴人仙太郎に対し、昭和二十四年度第二種事業税の賦課処分をなし、右事業税の滞納処分としてラジオ並にミシン各一台、小箪笥並びに三重塗箪笥各一棹を差押え、これを同地方事務所に運搬し、現在同所に保管していることは当事者間に争のないところであつて、被控訴人地方事務所長が被控訴人知事の委任に基いてこれをなしたものであることは旧地方税法(昭和二十三年法律第百十号)第十八条第一項第三条旧大阪府税条例(昭和二十二年大阪府条例第十号)第三条により明らかであるが、凡そ行政庁がその権限の一部を他の行政庁に委任した場合において、権限の委任を受けた行政庁がその受任権限に基いてなした行政処分の取消を求める訴訟にあつては、行政事件訴訟特例法第三条に所謂処分をした行政庁とは、受任庁即ち現実に処分をなした行政庁を指し、その委任庁を指すものではないと解するのが相当であるから、控訴人等の右行政処分の委任庁である被控訴人知事に対し右各処分の取消並びにその差押物件の返還を求める本訴は不適法としてこれを却下すべきものである。

次に控訴人等の被控訴人地方事務所長に対する訴の当否を審究するに当り、先づ職権を以て控訴人末子の同被控訴人が控訴人仙太郎に対してなした、昭和二十四年度第二種事業税賦課処分並びにその滞納処分としてなしたラジオ一台の差押の各取消及びその返還を求める訴の適否につき考察するに、控訴人末子が控訴人仙太郎の妻で、肩書住居において同居するものであることは当審における控訴人末子の供述により明白であるが、控訴人末子は右賦課処分並びにその滞納処分としてなしたラジオ一台の差押につき事実上の利害関係を有するとするもその処分を受けた主体でなく又右差押えられたラジオにつき自己の所有物なることその他右処分の違法を主張するにつき法律上の利益を有すべき特別の事由あることを主張するものでないから、右訴につき当事者適格を有せずその訴の内容の当否を審査するまでもなく、不適法としてこれを却下すべきものである。

よつて進んで控訴人仙太郎の請求並びに控訴人末子のその余の請求の当否につき審按するに成立に争のない乙第一号証第四号証第八号証の一、二、当裁判所が真正に成立したものと認める乙第二号証、第三号証、第五号証、第六号証の一、二、原審証人前田豊、同久保与十郎の各証言を綜合すると、被控訴人地方事務所長が、控訴人仙太郎の昭和二十三年度における蓮根耕作による所得を金四万七千円、その所得に対する昭和二十四年度第二種事業税の第一期分を金千百七十五円と決定し、昭和二十四年九月二十七日付その旨の徴税令書(同令書には更に府税たる都市計画税及び村税たる事業税附加税が並記された)を同日頃控訴人仙太郎に交付したこと、その後被控訴人地方事務所長が控訴人仙太郎の右所得を金四万三千円に減額更正した上、同第二種事業税の第二期分を金九百七十五円と決定しその旨の徴税令書(該令書にも第一期分と同様府税たる都市計画税及び村税たる事業税附加税が並記された)を同日頃控訴人仙太郎に交付した事実を認めることができる。しかして右賦課処分に対し控訴人仙太郎が昭和二十四年十月十三日被控訴人知事に対し異議の申立をなしたが未だその異議の決定がないこと、被控訴人地方事務所長が昭和二十五年四月二十日右事業税の滞納処分としてラジオ並びにミシン各一台小箪笥並びに三重塗箪笥各一棹を差押え、これを同地方事務所に運搬し、現在同所においてこれを保管していること、これに対し控訴人等が同年同月二十五日被控訴人知事に対し訴願の申立をなしたが、未だその裁決がないことは当事者間に争のないところであつて成立に争のない甲第一号証によれば右差押は控訴人等の肩書住居内にあつた前記物件につきなされたものであることを認めることができるそこで先づ控訴人仙太郎に対する右賦課処分の当否につき考察するに控訴人仙太郎が右居村南郷村で農業を営み、昭和二十三年度における蓮根の作付面積が二反七畝二十九歩であつたことは、当事者間に争のないとこであつて、前記乙第一号証、第三号証、第五号証、第六号証の一、二、並びに原審証人前田豊、同久保田与十郎当審証人赤野正男の各証言を綜合すると、昭和二十三年度における右南郷村の蓮根耕作による収穫は平均反当り五百貫でその一部を割当供出により荷受機関に出荷供出し残余は各耕作者において任意これを処分したものであつて、その所得は平均反当り金二万円を超え控訴人仙太郎は同年度における右蓮根の耕作により金四万三千円を下らない所得を収めた事実を肯認することができる控訴人仙太郎は同年度の蓮根の収穫は反当り三百六十貫でその供出割当は反当り五百貫であつたので不足分は他から借受け供出を完遂したが、その供出価格は一貫につき金三十円六十三銭で必要経費を控除すると所得はなかつた旨主張するけれどもこの点に関する原審証人大西友吉、当審証人北口辰造、の各証言並びに当審における控訴人末子の供述は措置し難く成立に争のない甲第二十一号乃至第二十五号証の出荷者、控訴人仙太郎名義の煙草特配証明書並びに衣料品特配用出荷確認証には昭和二十三年五月二十八日の三百五十貫の蓮根の出荷に対する煙草の特配、衣料品の特配、同日の蓮根三百八十貫の出荷に対する衣料品の特配、同年六月一日蓮根百六十貫の出荷に対する煙草の特配、衣料品の特配の記載があるけれども、当審証人赤野正雄の証言によれば、右は控訴人仙太郎個人の蓮根供出に対するものではなく、当時同人がその居村南郷村大字新田の蓮根出荷組合の役員をしていた関係上、組合員の蓮根供出に対する右特配につき組合員の代表者として一括して同人宛に右証明書並びに確認証が交付されたものであることが認められるから、右甲号各証によつては控訴人仙太郎主張の如き多量の蓮根の割当供出をなしたことを認める資料となし難く、他に同控訴人の右主張事実を認め、前段認定を覆すに足る証拠はない。してみると被控訴人地方事務所長が控訴人仙太郎に対し、昭和二十三年度の蓮根の耕作による所得を金四万三千円と認定し、これを課税標準として前記旧地方税法第六十三条、第六十七条第一項、第百四十八条前記旧大阪府税条例第二十八条に則り昭和二十四年度第二種事業税として金二千百五十円を賦課したのは正当であつて、何等違法の点はない。控訴人仙太郎は蓮根耕作による所得に第二種事業税を賦課するは不当であり、且つ同控訴人は所得税が賦課されていないのに第二種事業税を賦課するのは不当である旨主張するけれども、右は何等根拠のない独自の見解であつて、これを採用することができない。次に右滞納処分の当否につき審按するに、控訴人等は控訴人仙太郎が昭和二十五年二月十三日迄に右事業税の一部として金千三百円を納入したのに拘らず、右差押をなしたのは違法である旨主張するけれども、真正に成立したものと認める乙第九号証並びに原審証人前田豊の証言を綜合すると、控訴人等主張の内入金千三百円は村税なる事業税附加税に充当せられ、本件第二種事業税として納入されていない事実が認められ、成立に争のない甲第九号証、その他控訴人等の爾余の全立証によるも右認定を覆すことはできないのみならず、仮りに右金千三百円が本件第二種事業税の一部として納入せられたものとするも、右第二種事業税を完納するに足らないから、その滞納処分としてなした本件差押は違法ではない。次に控訴人等は右差押は控訴人等の立会なくしてなされたものであるから違法である旨主張するけれども、成立に争のない甲第一号証によれば右差押に当り滞納者たる控訴人仙太郎は不在であつて、又その同居の妻たる控訴人末子はその立会に応じなかつたので、警察官山口家久を証人として立会わしめて右差押がなされた事実が認められるから、前記旧地方税法第二十四条国税徴収法第二十一条に照し何等違法の点なきものと言わなければならない。次に控訴人等は右差押物件中小箪笥並びに三重塗箪笥各一棹及びミシン一台は控訴人末子の所有に係るから控訴人仙太郎に対する第二種事業税の滞納処分として右物件を差押えたのは違法である旨主張するから按ずるに、当審における控訴人末子の供述により、真正に成立したものと認める甲第二十七号証前記乙第四号証当審証人山中丑松の証言並びに当審における控訴人末子の供述を綜合すると、右三重塗箪笥一棹は控訴人末子が昭和八年一月控訴人仙太郎に嫁した際持参したものであり、又右小箪笥は昭和九年の初め頃控訴人等の間に長女朝野が出生した際、控訴人末子の兄山中丑松が控訴人末子に贈与したものであつて、いずれも控訴人末子の所有に属する事実を認めることができる。しかしながら右ミシン一台が控訴人末子においてこれを買受け、同人の所有に属するものである旨の当審における控訴人末子の供述は措信し難く、他に右事実を肯認するに足る証拠はない。してみると控訴人末子の被控訴人地方事務所長に対する右三重塗箪笥並びに小箪笥各一棹の差押の取消並びにその返還を求める請求は正当としてこれを認容すべきであるが、控訴人仙太郎は右物件が控訴人末子の所有に属することを理由として右差押の取消並びに右物件の返還を求めることはできないものと解すべきであるから控訴人仙太郎の請求及び控訴人末子のその余の請求は失当としてこれを棄却すべきである。

よつて控訴人等の被控訴人知事に対する訴を却下し、控訴人仙太郎の被控訴人地方事務所長に対する請求を棄却した原判決は正当であつて、控訴人等の被控訴人知事に対する本件控訴並びに控訴人仙太郎の被控訴人地方事務所長に対する本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却すべきであるが、控訴人末子の被控訴人地方事務所長に対する請求を全部棄却した原判決は一部不当であるからこれを変更し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十六条、第九十二条、第九十三条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 三吉信隆 萩原潤三 小野田常太郎)

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